知的障害

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目次

1 障害年金における知的障害の取り扱い

障害年金では、「知的障害(精神遅滞)とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるもの」と定めています。
「20歳前初診の障害基礎年金」として扱わます。
20歳以降の会社員の時(厚生/共済年金加入時)に知的障害と診断されても、「20歳前障害(国民基礎年金)」扱いとなります。
従って、

  1. 保険料の納付要件は問われません。
    保険料を納めていなくても受給することができます。
  2. 知的障害(知的障害を含む発達障害)の方は、先天性の疾患のため、原則、受診状況等証明書は必要ありません
    初診日の証明書の代わりに療育手帳の写しを提出すれば、初診日の証明として扱われます。
    初診日は出生日となります。
  3. 障害基礎年金の扱いですので、1,2級に該当しなければ、障害年金は支給されません。
  4. 20歳のお誕生日から申請できます。

※先天性でない傷病(アルツハイマー型認知症や頭部外傷/交通事故/脳梗塞/脳腫瘍などの後遺症、高次脳機能障害など)による知的障害は「症状性を含む器質性精神障害」で取り扱われます。詳しくは当センターにお問い合わせください。
 

2 知的障害の認定基準

等級 障 害 の 状 態
1級 知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時の援助が必要なもの
2級 知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに一部援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの

<等級判定ガイドライン>
平成28年9月1日に認定基準をより具体的に示した 「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」」が発表され、新たに審査の基準となっています。
この等級判定ガイドラインでは、診断書の記載事項である「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」に応じて等級の目安が定められています。
 
診断書で、おおまかな等級を把握する事ができます。詳しくは「障害等級の目安」(pdf)でご確認ください。
 
しかし、まったくこのとおりに認定されるわけではありませんので、注意が必要です。
一つの目安と考えてください。
 
等級判定ガイドラインでは、「知的障害」に関して、下記のように定められています。

  1. 知能指数を考慮する。ただし、知能指数にのみ着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を考慮する。
  2. 療育手帳の判定区分が中度以上(IQがおおむね50以下)の場合は、1級または2級の可能性を検討する。
  3. 療育手帳の判定区分が軽度(IQがおおむね70以下)の判定区分である場合は、不適応行動(ひきこもり、大声を出して暴れるなど、自分の行動をコントロールできずに周囲を困惑させたりする行動)等により、日常生活に著しい制限がある場合は、2級の可能性を検討する。
  4. 療育手帳が無い場合、幼少期から知的障害があることが養護学校や特殊学級の在籍状況、通知表などから客観的に確認できる場合は、2級の可能性を検討する。

 

療育手帳の等級・IQと障害年金の等級の関係


噂では「最重要度知的障害(療育手帳:A1・A)は1級、重度知的障害/中度知的障害(療育手帳:A2・B)は2級、軽度知的障害(療育手帳:B2)は貰えない」と言われていますが、療育手帳と障害年金の等級は必ずしも一致するわけではありませんので注意が必要です。
 
軽度(B-2:IQ70未満)で障害年金2級に認定された方もいます。
また、A(B-2:IQ20以下)で2級の方もいます。
 
◆療育手帳の等級とIQ

療育手帳の等級 IQ 精神年齢
最重度(A、A1、マルA、1度) 20未満 3歳以下
重度(A、A2、2度) 20~34 3~6歳未満
中度(B、B1、3度) 35~49 6~9歳未満
軽度(B、B2、C、4度) 50~69 9~12歳未満

3 知的障害の申請で注意したいこと

軽度知的障害での障害年金申請は非常に難しい!

知的障害のある方は、こ療育手帳をはじめとするさまざまな福祉サービスを利用されるケースが多く、このような福祉サービスは申請要件に合致すれば、ほとんどの場合、福祉サービスが受けられないことはありません。
また、役所には、年金に関する窓口があり、そこで障害年金に関する相談をされると必要書類を渡されます。
 
しかし、役所で「軽度知的障害では、障害年金は厳しいという情報」を貰うことは殆どありません。
従って、今まで、福祉サービスが殆ど受けられていたという経験から、窓口で渡された書類をご自分で作成し、安易に提出されている方が多いのです。
実際、役所は様式さえ整っていれば、書類を受け取ります。そして、3~4か月後、不支給通知を受け取ることになります。
 
一度、ご自分で請求して、不支給となった場合は、知的障害で障害年金を受給することは無理と思ってください。
 
障害年金の生涯受給予想額 3000~4000万円がかかってくる大勝負です。慎重に進めることが大切です。障害年金は、1発勝負です。
 

審査で重視される2つの書類

障害年金は書類審査です。提出した書類の内容で、すべてが決まってしまいます。
 
どんなに症状が重くても、日常生活に支障が出ていても、提出した書類でそれが伝わらなければ不支給になってしまいます。
 
 
 

 診断書

知的障害の等級判定においては日常生活能力の程度が重視されています。
しかし、限られた診察時間内で症状や日常生活状況のすべてを医師に伝えることは困難です。医師に十分に伝わっていないために診断書の内容が実際の症状とそぐわないものになり、結果的に不支給になっている方・低い等級に裁定された方を多く見かけます。
 
特に、軽度(IQがおおむね70以下)知的障害の場合、不適応行動(ひきこもり、大声を出して暴れるなど、自分の行動をコントロールできずに周囲を困惑させたりする行動)を具体的に医師に伝えること、それを診断書にお書き頂くことが必須となります。
 
当センターでは、申請者のお話をお聞きし、医師に診断書をご依頼する際お手伝いしています。
 
更に受け取り時に、記載漏れや誤記の確認、訂正依頼などもを適切に行っています。
 
 

 病歴・就労状況等申立書

診断書と並んで重要な書類が、病歴・就労状況等申立書です。
 
病歴・就労状況等申立書とは、発症から現在までの日常生活状況や就労状況を記載するもので、障害年金の請求者が自分で作成します。日常生活における困りごとを訴えることができる唯一の書類です。
作成にあっては以下の点をご注意ください。

  1. 出生~現在までの状況を3~5年に分けて記載する
    知的障害の場合、病歴・就労状況等申立書には出生日から現在までの日常生活状況や就労状況を記載する必要があり、記載要領では3~5年に分けて記載するように求められています。
  2. 具体的に記載する。
    • 不適応行動(ひきこもり、大声を出して暴れるなど、自分の行動をコントロールできずに周囲を困惑させたりする行動)等により、日常生活に著しい制限があることを具体的に書く
    • 知的障害と発達障害を併発している場合や知的障害の二次障害がある場合には、その症状や日常生活の状況などを具体的に書く

しかし、ご自分で書くことは、なかなか大変な作業です。また、ずっと一緒に生活している家族だと周囲から見るとできていないことでも当たり前になってしまって症状を認識できていないこともあります。
当センターでは、申請者のお話をお聞きし、病歴・就労状況等申立書を作成いたします。
 
 

 「診断書」と「病歴・就労状況等申立書」の整合性

障害年金の審査においては「診断書」と「病歴・就労状況等申立書」の整合性が重視されます。
 
例えば、診断書に「できない」と書かれていことが、病歴・就労状況申立書では「できる」場合、適切な等級に認定されないこともありえるのです。
 
当センターでは申請書類を提出する前に医師の作成した診断書と病歴・就労状況等申立書を比較して、記載内容や症状の程度に矛盾がないかを確認しています。

費用は発生しますが、受給事例を多く持つ社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。

4 知的障害と他の精神疾患の併発の取扱い

知的障害のある人に、うつ病や統合失調症が生じた場合等の取扱いは、厚生労働省から下表のように示されています。
ただし、知的障害、発達障害が関係しない神経症や精神疾患については、その出現している病態をもとに傷病の同一性や因果関係が個々に審査認定されます。
 
発達障害を伴っている場合
◆発達障害
 
詳しくは、当センターにお問い合わせください。

前発疾病 後発疾病 取り扱い
知的障害(軽度) 発達障害 「同一の傷病」として取り扱われる。
(初診日は出生日となり、基礎年金の取り扱いとなる)
知的障害 うつ病
知的障害 統合失調症 前発疾病の病態として統合失調症の病態が出現している場合は「同一の疾病」として取り扱われる。
※診断書等により病態の確認が行われる
知的障害 うつ病・統合失調症以外の精神疾患 前発疾病と後発疾病は「別の疾病」として取り扱う。

        ※前初疾病:前に診断された病名、後発疾病:後の診断名

下記の詳細条項にも注意してください。

軽度知的障害の人(目安IQ50~69)が、
   後に発達障害が診断され且つ発達障害が障害等級に該当する場合
-原則「同一疾病」として扱う。※初診日は出生日となり、納付要件は問われません。
-「同一疾病」とし、事後重症扱いとする。
知的障害が境界にある人(目安IQ70~80)が、
   後に発達障害が診断され且つ発達障害が障害等級に該当する場合
-「別疾病」として扱う。
※発達障害と初めて診断された日が初診日となります。
   納付要件を満たしている必要があります。
   初診日に「厚生年金・共済年金に加入していれば、3級から認められることになります。
③知的障害と診断された人が、後からうつ病が発症した場合
知的障害が起因して発症したという考え方が一般的であることから「同一疾病」とする。※初診日は出生日となり、納付要件は問われません。
知的障害と診断された人が、後から神経症で精神病様態を併発した場合
「別疾病」とする。精神病様態を示した神経症で受診した日が初診日となります。

 

5 所得制限

通常、障害年金に所得制限はありませんが、20歳前傷病による障害年金にだけは所得による支給制限があるため注意が必要です。
受給者本人の年間所得が360万4000円以上あると障害年金の1/2が支給停止に、462万1000円以上の所得があると障害年金が全額支給停止になります。
扶養家族がいる方は、これに扶養家族1人につき38万円を加算した額が所得制限額になります。
ただし、70歳以上の老人扶養親族については1人につき48万円、16歳以上23歳未満の特定扶養親族については1人につき63万円が加算されます。
所得制限額を超えた場合、その年の8月分から翌年の7月分までの1年間、障害年金が支給停止若しくは減額になります。

受給者の所得 360万4000円未満 360万4000円以上 462万1000円以上
障害年金 全額支給 1/2支給 支給停止

※所得とは・・・所得とは収入額からその収入を得るためにかかった必要経費と障害者控除等の諸控除を除いたものです。市町村役場で発行される所得証明書等で確認することができます。