【30代男性<てんかん>2級】自分で申請して不支給、当センターで遡及支給

男性:30代・A型就労支援事業所
傷病名:てんかん
決定した年金種類と等級:障害基礎年金2級
支給月から更新月までの支給総額:約620万円

ご自身で、障害年金の申請(現在の症状のみ)をされましたが不支給となりました。
ご友人から弊センターを紹介され来社されました。
初めての発作9歳はとのことでした。

●当センターのサポート

①今回初めての発作と受診が20歳前でしたので、「20歳前傷病」の扱いとなります。

②「てんかん」は「精神の障害」で扱われます。「精神の障害」には以下の6つの認定基準があります。

1.統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
2.気分(感情)障害:うつ病・双極性障害など
3.症状性を含む器質性精神障害
4.てんかん
5.知的障害
6.発達障害

【ポイント1】20歳前傷病による障害年金

20歳前(国民年金に加入していないとき)に初診日のある病気やケガで障害を負われた場合も「障害基礎年金」(※1)が支給されます。

(※1)20歳前に初診日がある場合でも、初診日が厚生年金加入期間中にある場合は、保険料の納付要件を満たすと、通常の障害年金が支給されます。

  • 納付要件(一定期間、年金保険料を納付していたか)は問われません。
  • 20歳前傷病による障害基礎年金の対象となるため、障害等級1級又は2級に該当する必要があります。
  • 生まれながらの傷病(※2)による障害や知的障害も該当します。
  • (※2)「発達障害」は生まれつきの脳機能の異常と言われていますが、発達障害の場合は、初めて病院にかかった日が初診日となります。そのため厚生年金加入中に発達障害で初めて受診した場合は、障害厚生年金で請求が可能です。
    ただし、知的障害と併発している場合、知的障害の程度によっては、知的障害単独の取扱いと同じく出生日が初診日になる場合があります。

  • 知的障害の場合、「初診日は出生日」となります。

■「障害認定日」の考え方
障害認定日とは、原則として初診日から1年6か月を経過した日のことを言います。
しかし、20歳前傷病の場合は、以下のうち、どちらか遅い日が障害認定日となります。
 ①20歳に達した日(誕生日前日)
 ②初診日から1年6カ月経過した日

■20歳前傷病による障害年金の支給停止ルール
20歳前傷病の障害年金は、「保険料を支払わなくても受給できる」という福祉的な要素があることから、通常の障害年金に比べ、支給停止になってしまう事由が多くあります

 ①所得制限

前年の所得により、年金の全額または半額が、10月分から翌年の9月分までの1年間支給停止されます。
所得税法上の同一生計配偶者や扶養親族の有無、扶養親族等の人数や年齢によって、支給停止となる基準は異なります。
扶養親族がいない場合、本人所得が3,704,000円以下だと支給停止はありません。

 ②刑務所などの矯正施設に入所したとき
 ③海外に居住したとき
 ④所恩給や労災保険の年金等を受給しているとき

【ポイント2】てんかんの認定基準

■発作回数の目安

障害の程度 障害の状況
1級 充分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上ありかつ、常時の援助が必要なもの
2級 充分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、ありかつ、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級
(厚生年金)
充分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、ありかつ、労働が制限を受けるもの

発作のタイプは以下の通り。

A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作
C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作

■発作の回数以外に考慮されること

てんかんで障害年金を受給できるかどうかは以下の点も考慮されます。

  • てんかんの認定に当たっては、その発作の重症度(意識障害の有無、生命の危険性や社会生活での危険性の有無など)や発作頻度に加え、発作間欠期(発作が起きていない時期)の精神神経症状や認知障害の結果、日常生活動作がどの程度損なわれ、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかという、社会的活動能力の損減を重視した観点から認定する。
  • 様々なタイプのてんかん発作が出現し、発作間欠期に精神神経症状や認知障害を有する場合には、治療及び病状の経過、日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。
  • てんかん発作とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときには、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
  • てんかん発作については、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない。

※「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の対象障害ではありません。

【ポイント3】当センターのサポート

まず、当センターが日本年金機構に前回申請時の不支給理由を確認しました。結果、以下のことが判明しました。

  • 「症状が認定基準に達していない」が不支給の理由であること
  • 現症(申請時)の症状のみで申請されていたこと

次に、面談で細かく発作の状況をお聞きとりしました。
その結果、認定日当時(この方の場合は20歳の誕生日)も現在も認定基準に達しているのではないかと推察いたしました。

認定日当時の医療機関にカルテが残存しており、診断書もご記載いただけることがわかりましたので、今回は認定日当時の症状の診断書と現在の症状の診断書を入手し、認定日請求(遡及請求)を行うことになりました。

てんかんの場合は、
・発作の重症度(意識障害、生命の危機、社会生活での危険性などの有無)
・発作の頻度
が重要な認定基準となります。
主治医へ発作の重症度や頻度を適切にご説明していないと、診断書にご記載いただくことができません。
この点に留意して、申請を勧めました。

●結果

認定日当時の症状も現在の症状も認定基準に達していると認められ、提出後約3ヶ月で障害基礎年金2級が認められました。
一般的に受給が難しいと言われる傷病でも、日常生活の不自由さを正しく伝え、適正な診断書がいただければ、より高い等級での受給につながります。
経験豊富な社労士にご相談ください。