知的障害・発達障害(20歳前発症)のケース
娘(20代)について両親(50代)からの相談
●ご相談の内容
親御様からの相談。娘が子どもの頃から周囲とのコミュニケーションがとれず、病院に相談したところ自閉症スペクトラムと診断された。その後は病院には行かず、大学まで卒業したが、対人コミュニケーションの改善はなかった。20歳を過ぎた頃、知人に障害年金を教えてもらい、市役所に相談。担当者に「病歴・就労状況等申立書」の記載方法について相談し、担当者の指示通り記入して障害年金の申請をしたところ、不支給の決定通知を受けた。
●なぜ不支給となったのか?
提出された主治医による「診断書」と「病歴・就労状況等申立書」の写しを拝見させて頂いたところ、「診断書」では、実際にお聞きした症状より軽い診断内容が記載されており、また「病歴・就労状況等申立書」の記載内容も具体的ではなく「診断書」との整合性も取れていませんでした。
「20歳前障害」の場合、「障害基礎年金」の対象となりますので、最低でも障害等級2級相当以上の障害の状況であることが必要となります。今回のケースは「診断書」「病歴・就労状況等申立書」では、障害の状況が正確には伝わらず、不支給になったものと考えられます。
●センターからのコメント
「20歳前発症」の知的障害や発達障害で、親御様がご自身で申請され、不支給の決定を受けた後に、当センターへご相談に来られることがよくあります。
「療育手帳がB1なのにどうして障害年金がもらえないのか!」
「なぜ、うちの子だけ支給されないのか!」
と憤慨されている方も多く、障害年金制度の複雑さを現わしています。
障害年金は書類審査で全てが決まります。どんなに症状が重く、日常生活に支障が出ていても、申請書類にその内容が反映されていなければ不支給になってしまうことも当然ありえます。
今回のケースは、
・専門家に相談せず、「申請さえすれば支給される」
・「療育手帳を持っていれば、必要書類さえ揃えて提出したら支給される」
と安易に判断されて、親御様が申請し、不支給となりました。「20歳前発症」の知的障害や発達障害は「障害認定日」の障害状況により判断されるため、障害等級に該当しないとして一度不支給決定されると、残念ながら再申請しても認められるケースはほぼありません。
「20歳前発症」の知的障害・発達障害の障害年金申請は「一回勝負」なのです!
療育手帳の判定が「B1」で不支給となるケースもあれば、「B2」であっても障害年金を受給できるケースもあります。
障害年金は支給決定されれば、知的障害・発達障害をお持ちの方々がこの先の人生において長く受給できる貴重な収入源となります。是非、申請される前に専門家に相談して、慎重に進めて下さい。